2012/01/25

なぜノルウェーに住んでいるんですか?

私が、ノルウェーに住んでいます、と言うとよく返ってくる質問です。面と向かって言われなくても、そう訊きたいんじゃないかな、と思ってしまうのは、自分でも「なぜノルウェーに住むことになったんだっけ?」と思っているからでしょうか。

短いバージョンの説明は、「夫がノルウェー人だから」です。これで相手も「ああ、それで。」と納得してくれます。

長い説明になると、私たちの仕事の説明が必要です。私たち夫婦は、ふたりとも大学で経済学を教えている准教授です。出会ったのは、カリフォルニア。大学院のクラスメートでした。博士課程も終了するころ、職探しをしたわけですが、同じ大学の同じ学部でふたつ求人があるなんて、マレな話です。でも、よほどの大都市でもない限り、同じ街にそんなにいくつも大学があるわけもありません。私たちのようなカップルは、しかし、決して珍しいことはなく、少なくともアメリカではよくあるパターンです。デュアルキャリアカップル、つまり共働きキャリアカップルなどど呼ばれます。大学側も、その辺の事情は分かっているので、一人を雇ったらその配偶者も雇う、という可能性を視野にいれています。そして、夫がコロラド州立大学で職を得たとき、私も配偶者として雇われたわけですが、私のポジションは、テニュアトラックと呼ばれる正規のものではなく、非常勤講師みたいなものでした。

コロラドに住んで2年ほど、グリーンカードも取りました。なので、そのままアメリカにいることは可能でしたが、私は正規のポジションを得るため、職探しを始めました。
そんなときに、ノルウェーのスタヴァンゲル大学から、求人があるから応募しないか、と声がかかったのです。スタヴァンゲルは夫の地元で、私たちが通っていたカリフォルニアの大学とも交流があり、そこの大学の研究者を何人か知っていました。そんな縁で応募したわけですが、実際に私と夫にオファーをいただいたときは、真剣悩みました。もう10年以上住んだアメリカを去るのは大きな決断です。他の大学からも、夫ともどもオファーがあったので、アメリカにいようと思えばいられる。

ノルウェーを選ぶ大きな要因となったのは、アメリカのテニュアシステムです。アメリカの大学では、最初の5年くらいは試用期間のようなもので(このときアシスタントプロフェッサー)、5年たった時点で審査されます。審査の基準はおもに学術誌への投稿、そして研究費を外からいくらくらい取ってきたか、ティーチングへの評価などがあります。この審査で十分とされると、パーマネントポジション、つまり永久就職できるわけです(この時点でアソシエートプロフェッサー)。永久就職してしまうと、よほどのことがない限りはクビにはなりません。その代わり、審査で不十分とされると、即クビです。このシステムはアメリカで大学教授を志す者には避けて通れない道です。そして、不十分と審査されてしまうことは、決して珍しくはありません。しかも私たちはふたり、リスクも二倍。

ところが、ノルウェーの大学はこの制度がありません。なんと、6ヶ月勤めると永久就職!つまり、ノルウェーに移れば、夫婦二人とも永久就職がほぼ確実に手に入って、(夫の)家族も近くにいるから子育ても手伝ってもらえて、さらに二人目の子供ができたら100パーセント有給の産休・育休が10ヶ月。労働環境もよい(らしい)。さんざん悩んだ末、仕事と家族、両方にとってノルウェーはよりよい選択であると決断しました。(当時アメリカはブッシュ政権だったので、アメリカに少し嫌気がさしていた、というのも少しあるかも。)

そして私たちは、2008年の6月にスタヴァンゲルに引っ越したのでした。

ノルウェー移住の決断は正しかったのか?それは、このブログでぼちぼち書いていきたいと思います。



0 件のコメント:

コメントを投稿